麹(こうじ)

麹(こうじ)は、麹菌(糸状菌の一種)を穀類に生やし、酵素を分泌させたもので、日本酒、焼酎、しょうゆ、みそなど発酵食品の醸造に使われます。東アジアや東南アジアの国々では、酒造りにカビの一種に麹菌を利用しています。日本の清酒はうぐいす色の胞子をつけた黄麹菌、中国・東南アジアではクモノスカビやケカビが利用されています。

麹は、さまざまな酵素を生産し、蒸米の溶解、デンプンを分解しアルコール発酵に必要な糖分の供給、酵母の増殖をすすめるための栄養源の供給などを行うとともに、酒の風味を形成します。デンプンを糖に分解するために麹を使うのは、東アジアの酒の共通点であり特徴です。

泡盛の特色はなんといっても黒麹菌を用いていることです。黒麹菌は黒褐色の胞子をつけた菌のことです。これは沖縄だけにしかみられません。黒麹菌といっても多くの種と変種があります。現在よく利用されている黒麹の菌種にはアワモリ菌とサイトウ菌の二つが主なものです。九州を中心とする焼酎は黒麹菌が白く変わった白麹菌が使われています。黒麹菌が沖縄から九州にもたらされたのは明治の終わり頃です。それまでは焼酎の麹は清酒と同じ黄麹菌で造られていました。

黒麹とは、胞子の色が黒褐色をしている麹菌の総称です。黒麹菌には一連の泡盛菌、すなわち、イヌイ菌・ウサミ菌・アワモリ菌・アウレウス菌・サイトウイ菌と、八丈島のイモ焼酎工場より分離されたバタテー・サイトウ菌があります。

現在、泡盛の製造の使用されている主な麹菌はアワモリ菌、サイトウイ菌です。酒造における黒麹菌の主な働きは、デンプンを糖化することですが、最大の特色はクエン酸をよくつくることで、これが醪(もろみ)中の雑菌の増殖を抑えるため温暖の地の酒つくりに適しています。また酒造以外の利用として、クエン酸の製造、調味食品・酵素・医薬品の製造などがあります。

紅麹菌(Monascus 属カビ)は、古くから中国・台湾において発酵食品の製造に利用されており、沖縄県においても豆腐ようの製造や食品の着色用に使用されてきました。この紅麹菌は李時珍の「本草綱目」(1596 年)によると消化を助け、血行をよくし、内蔵を丈夫にするという旨の記載があります。また、最近の研究においても、血清コレステロール抑制作用、血圧降下作用などの生理活性物質を生産することが明らかになっています。

紅麹菌は、味噌や醤油、お酒などの発酵食品に利用される麹菌の一種です。日本では、麹菌の中でも黄麹という種類が一般的ですが、中国・台湾では紅麹がよく用いられ、紅酒、紅老酒などの発酵食品があります。

紅麹菌は、黄麹菌よりも繁殖力が弱く、管理が難しいとされています。日本では、以前は沖縄で加工豆腐に使われるくらいで、それほど一般的ではありませんでした。しかし、発ガン性の高いとされる合成着色料に代わる天然色素として利用され始めてからその存在が広まり、1980年代以降から健康食品として注目を浴びるようになりました。

健康成分として紅麹菌が研究されてはじめてから、ガンの予防作用、血圧効果作用、血圧上昇抑制作用など、様々な効果が期待されるようになりました。特に注目を浴びたのが、コレステロール合成阻害作用です。

コレステロール血中濃度低下に、紅麹菌を用いた臨床試験では、3ヶ月継続摂取で25mg/dlの総コレステロール値が低下した、との結果が出ています。これまで、コレステロールを下げるといわれてきた他の食品の効果は、非常にわずかな変化しか見られなかったのですが、紅麹菌の結果は非常に高いものといえます。


さて、黒麹菌の大きな特徴は黄麹菌よりも、レモンのような酸っぱさのもとになるクエン酸をたくさん造りだす点です。酸の多い麹で仕込まれたモロミは他の雑菌が繁殖しにくくなります。すなわち、温暖な気候の沖縄でモロミが腐ることが少ない原因になっています。このような黒麹菌を使っているために酒の香りが良いともいわれます。また、黒麹菌は生澱粉(でんぷん)を分解する力も黄麹菌より優れているといいます。